2019.06.26
ブログ
実家の家族信託
こんばんは!副代表の加古です。
先週、「親が認知症になった後も自宅を売却できるようにする方法を教えて下さい」と質問があったので、ご紹介します。
家族信託に関する記事は、他にもありますので参考にして下さい。
<相談内容>
現在、築50年以上も経っている木造一戸建てに一人で暮らしている母(80歳)について、長女Aさんからの相談です。
父はすでに他界しており、母には長女と次女がいます。
母は、まだまだ元気で、記憶もしっかりしています。しかし、高齢とゆうこともあり、いつ認知症等になるかも分かりません。そうなった場合は、高齢者施設への入所を考えていますが、その施設入所の費用などに充てるために自宅の売却をする必要があります。
<問題点>
お母様はいまはお元気でも、年齢からすると、いつ認知症等のため判断能力を喪失するか分かりません。そうなると、施設へ入居するための自宅の売却処分などは、判断能力を喪失しているため出来ません。このままでは、長女Aさんが代わりに売却することも出来ません。
この様に場合には、お母様の法定代理人として家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう制度(=法定後見制度)があります。
しかし、自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
なぜなら、自宅はお母様にとって「生活の本拠」であり、「心のよりどころ」でもあります。自宅の売却は、お母様の心身に大きな影響を与えるためです。そして、家庭裁判所は合理的な理由がなければ売却を認めません。
また、お母様にある程度の資産がある場合は、家族が成年後見人となるのではなく、専門職(弁護士や司法書士)が選任される可能性が高くなります。
なお、実家の売却が終わっても、成年後見制度はお母様の判断能力が回復するか、お亡くなりになるまでやめることが出来ません。
多くの場合は、専門職の成年後見人へ支払う報酬(年間数十万円)は、お母様がお亡くなりになるまで続きます。
つまり、何も対策をせずに所有者が認知症など物事の判断能力を喪失してしまうと、成年後見人を付けても実家の売却は簡単にはいきません。
〇問題の解決方法
<家族信託の活用>
不動産の所有者であるお母様を委託者兼当初受益者、長女Aさんを受託者、お母様の自宅を信託財産とする家族信託契約を締結します。
委託者と受益者がお母様、名義だけ受託者である長女Aさんとする信託契約としているため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などはかかりません。
家族信託を利用することで、家族信託の信託契約で決められた目的に従い、受託者である長女Aさんの判断でお母様の財産を処分、管理、活用することが可能になります。
家族信託の契約後、必要に応じて法定後見制度を利用するとしても、家族信託を設定した財産については、成年後見人の権限や家庭裁判所の監督権限は及びません。
主たる目的である自宅の売却を受託者である長女Aさんができることになり、売却代金は信託財産となります。そして、信託財産となった売却代金は受益者であるお母様のものですので、受託者である長女Aさんがお母様の施設入所費用や生活費に使うことができるのです。
〇まとめ
<家族信託による効果>
①所有者であるお母様が認知症となっても、受託者として売却権限を持っている長女Aさんが適切なタイミングで、実家を売却することができます。
②売却によって得られた金銭も、受託者である長女Aさんが管理し、お母様の生活、介護、入所費用や納税費用などの支払いも行うことができます。
③管理処分を行うのは、受託者である長女Aさんなので後見人報酬のような経費は必要ありません。
〇このような方におすすめです。
①施設入所費用、生活費や入院費用など、実家を売って費用を確保したい。
②管理できない実家を、売却できるようにしておきたい。
③遠く離れて暮らしている親が、いつ認知症となっても対応できるようにしておきたい。
④後見制度は出来れば使いたくない。
親御様の財産管理でお悩みの方は是非ご相談下さい。