こんばんは。加古です。
障がいを持つお子様を抱えるご家庭では、ご自身が亡くなった後に誰がどのようにお子様の面倒を見てくれるのか不安を抱えている方が多いと思います。
以前、「障がいを持つ子と家族信託」と題するブログを書きましたが、今日のさらに詳しく書きたいと思います。
障害を持つお子様を抱えるご家庭での問題を「親亡き後問題」といいます。この「親亡き後問題」に有効な方法として福祉型信託があります。
代表的な福祉型家族信託は、高齢者や障がいなどの財産管理が難しい家族を抱える人が、信頼できる家族を受託者にして、財産を管理・運用し受益者(高齢者・障がい者)に生活費や施設利用費等を給付するという仕組みです。
この「親亡き後問題」は障がいを持つ親御さんだけの問題ではなく、交通事故にあい重度の後遺症が残ってしまったような場合や極度の浪費癖がありお子様自身に財産管理をさせるには問題がある場合にも同じようなことがいえます。
〇事例
相談者:70歳母B
家族関係:父A(2年前に他界)、母B、長男C、次男D、長女E
<状況>
次男Dには、障がいがあり自立した生活が難しく、意思疎通もできない。
母Bは、次男Dと長女Eと三人で暮らしている。
<不安>
母B亡くなった後に、Dは自宅で安心して暮らすことができるだろうか?
Dが母Bから引き継ぐ相続財産を管理はどうすればよいか?
長女Eは次男Dの面倒をよく看てくれているが、Eにばかり負担をかけてしまうことになり気掛かりだ。
<希望>
母Bが亡くなった場合でも、Dがこれまでどおり自宅で過ごせるようにしてやりたい。
財産は次男Dのために管理して使ってほしい。その財産管理を長女Eに託したい。
■母Bが何らの対策もせずに亡くなった場合
母Bの財産は遺産分割協議により相続人間で分けることが一般的でしょうが、次男Dは意思疎通ができないため協議をすることができません。
したがってこの場合は、法定相続分として長男C、次男D、長女Eがそれぞれ1/3ずつ財産を承継することになります。
しかしこれでは、自宅が3人の共有となってしまったり、金銭も3人で均等に分けたりしなければならず、母Bの希望通りにはなりません。
■負担付遺贈
母Bが長女Eに遺産を多く与え、その代わりとして次男Dの面倒を看るという義務を課す遺言、いわゆる負担付遺贈もあります。
この場合、面倒を看るのが自分一人となってしまう長女Eが「次男Dの面倒を看る」という義務を果たさない可能性もあります。
また、受遺者である長女Eは承継した遺産を自由に使うことができるため、散財して負担を履行できなくなってしまうこともあります。
このような場合、次男Dの生活の安定は確保できません。
■成年後見制度
母Bが、次男Dのために長女Eを成年後見人とする後見開始制度の利用が考えられます。そのうえで、Dの生活のために必要な財産を遺言書で次男Dに相続させる準備をしておきます。
これにより、母Bがご健在の時は長女Eが次男Dの財産管理と身上監護を行います。母Bが亡くなった後も、長女Eが後見人として次男Dの財産管理と身上監護を行います。
ただし、成年後見制度は必ずしも長女Eが後見人に選ばれるわけではありませんし、財産管理を長女Eの判断で全てできあるわけではありません。
■福祉型家族信託
母Bは、次男Dの生活支援を目的として、母Bを委託者、長女Eを受託者、母Bを第一受益者、次男Dを母Bの亡くなった後の第二次受益者とした家族信託契約を締結します。
また、場合によっては確実に信託目的を達成できるよう専門家を信託監督人として定めておくことも検討します。そして、信託終了時の残余財産の帰属権利者を長男Cとする信託契約を設定します。
家族信託契約後、受託者である長女Eは信託目的に従って財産を管理し、母Bと次男Dのために生活費や介護費等の費用を支払っていきます。専門家が信託監督人となった場合には、長女Eの受託者としての行動を監督します。
「親亡き後問題」では、福祉型家族信託の利用により希望通りに財産を承継させることができます。さらに、遺言書や成年後見制度を併用によりきめ細かな財産管理・財産承継が実現できます。
家族信託契約では、家族関係や家族の状況、財産の額や内訳、収支状況、将来生活の希望等、様々な個別上に応じて適した内容を検討する必要があります。そのため家族信託契約には時間を要します。そして、複雑な契約である事から、判断能力が
衰えてくると理解が出来ず困難となりますので、お早めにご相談下さい。