2020.08.05
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受益者代理人の業務
こんばんは。加古です。
今日は、家族信託における「受益者代理人とは何をするのか?」についてです。
※受益者代理人についてのそのほかの記事は「信託監督人と受益者代理人」を御覧下さい。
○はじめに
「受益者代理人」とは、受益者のために、受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者です。
受益者が高齢者で判断能力が低下する恐れのある場合や未成年者などでは、受益者の権利を行使することは困難ですので、大変役に立つ制度です。
ただし、受益者代理人は、受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の権限を有すしますが、その反面、家族信託契約等で特別の定めをしない限り、受益者自身は権利を行使することができなくなります。
受益者代理人は、信託監督人と異なり、信託行為のみによる選任に限られます。家族信託の当事者など利害関係人によって裁判所に申立てても選任することはできません。
○業務内容など
受益者が毎月生活のために定期的に金銭を与える定めのある家族信託の場合に、受益者代理人がその金銭給付を受託者に求めたり、アパート収入の分配を受託者に求めたるすることが出来ます。
以上のことから、保有財産の全部を信託財案とした場合で受益者代理人を付けておくと、受益者代理人は成年後見人のように権限を包括的に持つことから、財産の管理処分の方針を受託者に指図することが可能ですし、状況によっては、受託者を監督したり牽制することにもなります。
なお、家族信託は、受託者となる者を信頼して財産の管理処分を託すわけですが、さらに強い権限を持った「受益者代理人」を付けることは、受託者と受益者代理人との間で意見の食い違いが生じる可能性もあります。このようなことにならないように、家族信託を進めるにあたっては、家族信託設計に細心の注意が必要です。
※例えば、受益者代理人と受託者を委託者の子である兄弟姉妹とするような場合には、将来的な紛争リスク(例:兄弟姉妹間の関係性の悪化)を検討すべきこととなります。
○受益者代理人の任務終了
受益者代理人の任務は、受益者代理人の死亡、辞任や解任などによって終了します。その他にも、① 委託者及び受益者代理人に代理される受益者の合意、② 信託行為において定めた事由、によって終了します。