2020.06.09
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信託監督人と受益者代理人
こんばんは。加古です。
今日は家族信託における「信託監督人」「受益者代理人」について書いていきます。
○信託監督人
家族信託は、信頼できる家族に自分の財産の管理を任せる手法ですので、信頼関係のもとで財産管理がしっかり行われていれば、そもそも「信託監督人」を置く必要はありません。
しかし、受益者(信託財産から利益を受ける人)が年少者や高齢者、知的障がい者などである場合には、その人自身が財産管理をする受託者を監督することは難しいです。
このように、日々の財産管理が適切に行われているか、チェックすることが出来ないようなケースは「信託監督人」が重要になってきます。
また、家族信託では、後見制度と異なり裁判所の監督はありません。あくまで契約に基づいて財産の管理を行うものなので、財産を勝手に処分されたりなどの可能性は否定できません。
本人は受託者に大切な財産を託すわけですから、「信託監督人」がいた方が安心できるといった場合もあると言えます。
<信託監督人を置くことを検討した方がよいケース>
①信託財産に運用性・収益性がある
②受益者自身が受託者を監督するのが困難
③将来、家族間において紛争になる・その恐れがある
など
・信託監督人を置くとした場合、誰を信託監督人とすれば良いでしょうか?
信託監督人は、善管注意義務・誠実義務・公平義務を負っており、かつ家族信託を理解したうえで受託者を監督する必要があります。
適格性があれば親族が信託監督人に就くことは可能ですが、事案によっては、司法書士などの専門職を信託監督人とした方が適しているケースもあります。
信託の仕組みや信託事務について知識のある専門職であれば、適切な監督が出来ますので安心です。
・信託監督人の報酬
信託監督人に対しては、報酬を支払うことも出来ますし、その金額についても家族信託の中で決めることが出来ます。
○受益者代理人
家族信託では、受益者の代理人を定めることが出来ます。この人のことを「受益者代理人」といいます。
受益者代理人は、受益者のために信託法上の一切の行為を代理する権限を持っています。
受益者代理人は、受益者が自分自身で権利行使が出来ない場合(受益権に関する意思決定や受託者への監督などが困難)に必要となります。
<受益者代理人を選任することを検討した方がよいケース>
①受益者本人による意思表示が困難
※認知症・知的障害など
②受益者自身による受託者の監督が十分にできない
など
例えば、受益者が認知症になってしまい、意思疎通が出来なくなった場合に備えて、家族信託契約を締結するときに、受益者代理人となるべき者を定めておきます。
・受益者代理人の権限(注意点)
受益者代理人は、受託者への監督権限や受益者が有する全ての権利を行使する事が出来ます。
ただし、受益者代理人を定めると、原則として、受益者は直接、権限行使が出来なくなり、全ての権限行使・要求は、受益者代理人が行うことになります。
受益者が元気であっても、受益者代理人を介して、行うことになります。
つまり、受益者は何も出来なくなってしまうのです。
○最後に
家族信託では、受益者の権利を守ることは非常に大切なことです。いろいろな場面を想定して、受益者の権利を守るための対策を講ずる必要があります。