司法書士/土地家屋調査士アストラグループ
名古屋で家族信託・民事信託・任意後見契約・認知症対策・相続対策
のことなら司法書士法人アストラ
052-212-8956

BLOG
ブログ

ホーム > ブログ
  • 2019.08.21
  • ブログ

家族信託をした不動産の売買

こんばんは!副代表の加古です。

 

いま、認知症になった後も自宅を売却できるよう家族信託を利用するケースが増えていますが、実際の売却の流れはお分かりですか?

 

自宅や賃貸物件など、家族信託を利用して所有不動産を家族に託した場合、その後、信託不動産を売却する場合にはどのような方法があるのでしょうか。
今日は家族信託をした不動産の売買について、考えられる代表的な3つのケースを説明します。

 

父親が現在居住する自宅を、委託者兼受益者を父親、受託者を長男として信託契約し、将来的に父親の生活費や、老人ホームの入所費用の捻出の為、不動産売却が必要となった場合に、長男の判断だけで、スムーズに行えるように信託を組成したケースを前提とします。

 


父親が委託者兼受益者、長男を受託者に指定し、老人ホームの入居費用を捻出するため自宅を信託財産として家族信託しました。

 

①信託の目的に従って売買する
家族信託をした場合、信託財産の管理運用方法は、信託契約で定めた目的の範囲内で受託者が行います。この信託契約において信託財産たる自宅の売買が含まれていれば、信託の目的に従って受託者である長男のみで自宅を売却することができます。

自宅売却において「売主」は受託者である長男です。そして、信託不動産である自宅の売却で得た「売買代金」は、信託財産に組み込まれ、以後、この「売却代金」が信託財産となります。

 

以後の父親の施設費用や生活費は、この信託財産に組み込まれた売却代金から支出していきます。

なお、不動産の売却時には、売却益が生じた場合に課税される譲渡所得税がありますが、この譲渡所得税は信託不動産から利益を享受する「受益者」である父親が納める義務を負います。

 

②信託契約の終了によって売却
上記①と異なり、信託契約の目的や内容に信託不動産たる自宅の売買が含まれていない場合、受託者である長男の権限では信託不動産の売却が出来ません。

したがって、信託契約期間中は、自宅の管理を続けて行かなければなりません。

 

その後、父親が亡くなる事によって信託契約が終了すれば、自宅の所有者として指定された人が、不動産を売却するという方法があります。

一例として「父親の死亡によって信託契約は終了する。信託終了後の信託不動産は長男に帰属させる。」との条項を入れることにより、長男は家族信託の受託者としてではなく、自宅の所有者として売却できます。

 

③信託不動産の受益権を売却する
3つ目の方法は、信託不動産である自宅自体の売却ではなく、受益権を売却するという方法もあります。

家族信託によって得られる利益(=自宅を利用する権利など)は「受益者」が享受することになります。これは、信託不動産自体(不動産の名義)と受益権は別個のものだからです。

 

つまり、信託不動産自体を売却するのではなく、受益者が持つ「受益権」を売却すれば、買主である「新受益者」はこの不動産に住むことができるため、実質的に上記①や②と同じような不動産自体の売却と同様の効果となります。

そして、受益権の売却した場合は、所得税法上、信託不動産の売却と同じと解釈しますので、この受益権の売却にも上記①で述べたとおり、譲渡所得税は「受益者」である父親が納める義務があります。

 

なお、自宅について信託受益権として売買されることは稀で、アパートなどの投資物件に利用されるケースがあります。信託不動産が自宅の場合は、信託契約を解除して売買することがほとんどです。

最後に、譲渡所得税は所有期間によって税率が異なります。信託不動産を売却した場合の所有期間の考え方は、委託者=受益者となるような信託について、実際にその不動産を取得した日から所有期間を計算します。
なぜなら、信託契約したことでは委託者=受益者は不動産を取得したことにはならないためです。