2019.05.29
ブログ
会社のホールディングス化とM&Aのデメリット
こんばんは!副代表の加古です。
今日は先週に続き、【会社のホールディングス化とM&Aのデメリット】についてです。
●ホールディングス化のデメリット
(1)連携が取れにくい
同じ会社の別事業部の場合は、連携も取りやすいのですが、別企業となると意思疎通がスムーズにいかなくなることもあります。
ホールディングスの形態をとっている場合は、裁量権のほとんどを親会社に委ねられています。事業内容、社風、職場の雰囲気なども会社ごとで違うため、親会社との連携不足が生まれやすくなります。
(2)グループ全体の方針に事業会社間で対立が起こる場合がある
上で述べたように、会社間では、事業内容はもちろん、社風、考え方に多様性が生まれます。
こうした中で、親会社が下す方針が、一方の子会社にとって良い判断であっても、他方の子会社にとっては悪い判断となる場合があります。
こうなると、子会社間で対立が生まれてしまいます。
(3)法人維持コストが増加してしまう
ホールディングス化の大きなデメリットとして、会社間で部門の人件費が重複しコストが増加してしまうことがあります。
ホールディングスとしては一体の集合体でも、親会社や子会社はそれぞれ1つの会社です。特に、バックオフィス部門の肥大化が、ホールディングス全体の収益確保を阻害してしまう可能性があります。
ホールディングス(親会社)は、このようなデメリットをいかに解消し縮小させるかというところではないでしょうか。
ホールディング化には以上のような注意点はありますが、先週のブログ(会社のホールディングス化とM&A)でも書いたとおり、事業拡大、経営の効率化、事業承継など様々な側面で有効な手段になります。
●M&Aのデメリット
買い手側のデメリット
(1)のれん代の過大評価
M&Aによって得られるシナジー効果も買収価格に加味します。
この加味する金額を、M&Aでは「のれん代」と呼び、その企業が歴史の中で確立してきたブランド力、信用力、顧客との関係などを表します。ちなみに「のれん」は、お店の軒先に掲げられている暖簾(のれん)に由来します。
買い手企業は、のれん代も含めた上で買収しますが、シナジー効果や将来的な収益力はあくまで予測でしかない為、予想が外れる可能性があります。
想定よりもシナジー効果が得られなかった場合は、最悪、のれんの減損処理が発生し、資金繰りが一気に悪化する恐れもあります。
M&Aの際には買い手側は、必ずこの問題点を考慮した上で、買収価格を決定しなくてはなりません。
(2)簿外債務・偶発債務
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務を指し、偶発債務とは今後債務となり得る要素です。
予め簿外債務などを把握した上でM&Aをする場合には問題ありませんが、後から発覚した場合には大きな問題となります。
偶発債務や簿外債務は、買い手側の資金繰りを大きく悪化させてしまうことになるので、M&Aの際には、デューデリジェンスを行い、問題点をなるべく全て把握するようにしておく事が大切です。
(3)有能な人材や技術の流出
買い手企業はM&Aにより売り手企業の従業員を抱えることになります。買い手企業と売り手企業の社風・慣習・従業員の待遇を融合することは難しいですが、上手く調整できないと、買収した企業の人材が流出してしまい、想定した事業が行えないリスクがあります。
買収先の有能や人材が、技術ごと他社に引き抜かれる、または退職するようなことがあれば、M&Aには大きなメリットはなかったということになります。
売り手側のデメリット
(1)取引先や顧客からの反発、契約打ち切り
M&Aの実行により事業の運営元が変わる為、取引先や顧客との契約条件が変化します。契約条件等の変化を恐れて、取引先などから反感を買う恐れがあります。
一般的にはM&Aを実行するまでは、取引先や顧客にはM&Aを実施する旨を公表しません。
(2)雇用や労働条件の変更
M&Aにより売り手企業の経営者に変わります。そして、労働条件も買い手企業に準拠することになり、従業員にとっては雇用環境が変化します。
ストレスを受ける従業員や、将来に不安を抱く従業員が出てくる可能性があるため、従業員の不安・不満を緩和させる努力が必要ですし、M&Aの契約上で労働条件を変化させない旨を取り付ける事が重要です。
(3)買い手が現れない・希望価格で売却できない
M&A市場では、企業は「将来的にどれだけの収益を見込めるか」で評価がなされます。将来性や収益性が無い場合、買い手が現れない可能性があります。
現れたとしても希望価格で売却できないケースも多く、売り手側にとっては大きな問題点の一つです。
売り手が希望価格で売却するにはいかに交渉を上手くやるかがポイントだといえます。
M&Aでは、売り手側はすべての情報を包み隠さず開示することが大切です。後々、ネガティブな情報が発覚すると、訴訟問題にまで発展する恐れもあります。買い手側は、デューデリジェンスを慎重に行って下さい。
また、売り手側は、従業員が買い手企業から不当な扱いを受けないよう、買収側は、従業員や技術が流出してしまわないよう、両者で友好的な関係を築いていくことが重要です。