2020.04.14
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家族信託契約の開始時期について
こんばんは。加古です。
今日も、家族信託について、「委託者となる親はまだ元気なので、家族信託の契約だけ済ませておいて、実際のスタートは委託者が認知症になった時としたい」と言うご要望ついて記事にしたいと思います。
このような、家族信託契約の効力発生に条件を付けることは可能なのでしょうか?
結論だけ言えば「契約は今するが、その契約の効力はある条件が達成された時に生ずる」と言う契約は、可能です。
そして、委託者である親が「認知症になった時に家族信託契約の効力を発生させることとするのは、問題はありません。
しかし、法律的には有効でも、以下で説明するような様々な問題点があります。
1.委託者である親の認知症の証明
家族信託の効力が発生すると、委託者である親の信託財産を管理・処分する権限が受託者に変更されます。
別の言い方をすると、委託者である親は、家族信託の効力が発生した場合には、自ら信託財産を処分することが出来なくなります。
所有者としての権限(管理・処分等)が無くなってしまうことは、その人にとって非常に重大な事柄です。
したがって、契約の効力が発生する「条件」は、明確であること、そして、客観的であることが必要です。
一般的に認知症になったことは、医師の診断書によって証明するかと思いますが、診断書からでは「何月何日に認知症を発症した」と言うことは分かりません。診断書は客観的ではありますが、「いつ」の部分について明確性に欠けてしまうのです。
そうすると、「委託者が認知症になった時」と言う条件は、必ずしも明確で客観的とは言えませんので、思わぬトラブルになってしまう恐れがあります。
2.不動産登記ができなくなる可能性
信託財産に自宅等の不動産がある場合は、不動産を受託者名義に変更するため「信託に基づく登記」を行います。
家族信託の主たる目的が不動産の管理・処分であれば、「信託に基づく登記」は必ずすべき手続きです。
この登記は、我々司法書士が委託者である親から委任を受けて行いますが、家族信託契約書で「委託者が認知症になった時から家族信託の効力を発生させる」と言う条件をつけてしまうと、この信託に基づく登記が出来なくなる可能性が高くなります。
それはなぜか?
家族信託の契約を締結し時点は、まだ家族信託契約の効力が発生していないため、登記の委任状をもらう事は出来ません。
そして、家族信託の効力が発生した時は、委託者である親は認知症ですのでその書類の意味を理解できない可能性があります。理解頂けなければ司法書士は、委任状をもらう事は出来ません。
このように、家族信託契約の効力発生時期を委託者が認知症になった時とした場合、不動産の登記が出来なくなる可能性があります。
信託に基づく登記が出来なければ、受託者による不動産の管理・処分も困難となってしまう恐れがあります。
3.最後に
以上のように、家族信託契約の効力発生に条件をつけることは、非常にリスクが高く、望み通りの財産管理・承継が出来なくなってしまう恐れがあるため、おすすめしません。
アストラでは、お打合せを何度も行い手間と時間をかけて準備していき、受託者が信託財産の管理・処分をしっかりと行えるような家族信託契約をサポートしていきます。