2020.06.19
債権法改正
民法改正(保証意思宣明公正証書)
こんにちは、田中です。
先日、事務所内で議論があった、保証意思宣明公正証書について、説明したいと思います。
保証人となるのは、友情や親族関係でなることが多くあります。
「会社の運転資金のために、保証人になってくれ」、「名義だけ貸してくれ」等、義理人情で渋々保証契約書にサインをしてしまうケースです。
しかし、事業資金の借入れのための保証契約においては、その保証債務の額が多額になりがちであり、保証人の生活が破綻することがしばしばありました。
そこで今回の債権法改正で、公証人による、保証意思の確認手続き(保証意思宣明公正証書)や情報提供義務等、保証契約について新たな規定が設けられました。
保証契約締結時におけるポイントは以下のとおりです。
1.保証人となろうとする者は個人か法人かどうか
2.保証債務が、主たる債務者の事業のために負担した貸金等債務か
3.保証契約締結時に、主債務者から保証人となる者に情報提供義務がなされたか
4.保証人が主債務者である法人の取締役であったり、主債務者が行う事業に従事している配偶者等ではないか
5.保証契約の締結に先立つ1ヶ月以内に、保証意思宣明公正証書を作成しているか
以下、上記ポイントについて、説明していきます。
●2における「事業のために負担した貸金等債務」とは
ここにおける「事業のために負担した貸金等債務」とは、会社の事業を遂行するために必要な材料を仕入れるために借り入れた資金や、工場の建設費用等、事業に用いるために負担した貸金のことを言います。
判断基準としては、主債務者がその貸金等債務を負担した時点で、借入れの事情に基づいて客観的に決まります。
そのため、借り入れた時点において事業のために使うつ名目であったのならば、実際に事業で使われていなかったとしても、「事業のために負担した貸金等債務」に該当します。
ここで注意を要するのは、いわゆるアパートローンは「事業のために負担した貸金等債務」に該当すると解されています。
●情報提供義務とは
保証人に、主債務者の財産状況を把握させるために、主債務者は保証人に対し、以下の情報を提供する義務が課されました。
・財産及び収支の状況
・主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
・主債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
万が一、主債務者がこの情報提供義務を怠り、保証人が主債務者の財産状況について誤認をした場合には、その保証契約を取り消すことができます。
この場合、情報提供義務がされていないことを債権者が知っていた、若しくは知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができるので、債権者側としては、この情報提供義務がなされていることを把握及び担保しておく必要があると考えられます。
●4における、保証意思宣明公正証書が不要となる主債務者
以下のようなある一定の者は、保証意思宣明公正証書の作成が不要とされています。
主債務者が法人の場合、
・その法人の取締役、執行役又は理事等、これらの者に準ずる者
・その法人が株式会社の場合、総株主の議決権の過半数を有する者、等
主債務者が個人の場合、
・主債務者と共同して事業を行う者
・主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者
上記のような者が保証人となる場合は、保証意思宣明公正証書の作成は不要となります。
●保証意思宣明公正証書の作成手順
保証人となろうとする者は、保証契約を締結する前の1ヶ月以内に、公証人による、保証意思宣明公正証書の作成が必要となります。
この保証意思宣明公正証書は、保証意思を確認するものであるため、代理人によって嘱託することはできず、本人が直接、嘱託をする必要があります。
なお、この保証意思宣明公正証書は、保証意思を確認するものであるため、これ自体が保証契約の内容とはなりません。
そのため、保証契約は、別に締結をする必要があります。