2020.04.22
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株式の家族信託
こんばんは。加古です。
中小企業の株式(非上場)に関する家族信託についてです。
中小企業の社長が全株式の50%以上を所有していると、社長が議決権の過半数以上を持っていることになります。もし、社長が認知症になってしまった場合、会社経営はどうなるのでしょうか?
過半数以上の議決権を持つ社長は判断能力が認めらないため、株主総会で議案に対する賛成・反対の票を投じることが出来ず、会社運営に支障をきたしてしまいます。
このようなリスクを回避するために、株式を後継者や親族に生前贈与するという方法もありますが、中小企業は社長が株式の大半を保有しているケースが多いので、生前贈与では多額の贈与税が発生してしまうかもしれません。
〇株式と家族信託
大株主である社長が認知症を患ってしまう場合に備えて、家族信託を利用することができます。
株式の家族信託でも現金や不動産と同じように、株式の名義は委託者である社長から受託者へと変更されます。
家族信託では受託者に信託財産である株式の管理・運用を行う権利がありますので、株主総会での議決権の行使(議案の賛成・反対)は受託者が行います。そして、配当は従来通り社長が受け取ります。
〇株式の家族信託における注意点
①株式の譲渡承認
株式の家族信託の場合は、信託契約を締結するだけでは株式が信託財産とならず、目的を達成できなくなる恐れがあります。
株式の信託は、株式を譲渡する場合に準じて、株主総会や取締役会の承認を受ける必要がある場合があるのです。
会社の登記簿や定款を確認し、「株式を譲渡するには、株主総会(取締役会)の承認を要する」等の記載がある場合には、株式を信託するについて会社の承認が必要ですので注意して下さい。
②指図権
株式を信託した場合、議決権を行使する者を誰にするかという問題があります。
議決権を行使する権限を受託者のままとすることもできますし、受託者以外の者(例えば受益者や現社長等)を「指図権者」に指定し、その者に議決権の権限を持たせることも可能です。
指図権を行使すれば、受託者に対して指示を出せます。つまり株式を管理するのは受託者ですが、議決権を行使する際は指図権者である委託者(社長)の意思が反映されるようになるます。
逆に、指図権を定めておかないと、委託者である社長の考え・想いを無視して、議決権を行使されてしまう恐れがあります。
したがって、指図権を定めたうえで、大株主たる社長が保有株式全てを信託した場合、社長が元気なうちは社長が指図権者として自分の意志を株主総会に反映できるようにしておき(経営権を掌握)、認知症になってしまったら別の者(現社長)が指図権者として議決権を行使出来るようにしておくのが安心です。
③受託者を誰にするか
上記②に関連することですが、すでに述べたように株式信託の受託者は、指図権者の指定が無ければ自ら議決権を行使することができる大きな権限を持ちます。
信託財産となった株式が総株式の過半数を占めている場合、実質的に受託者が経営権を掌握することにもなりかねません。
したがって、受託者を誰にするか、また予備的に第二受託者を誰にするかというのは、非常に重要となります。
〇最後に
企業を永続的に発展させ、社会に貢献し従業員が幸せであるためには、的確な経営安定化・事業承継(後継者問題)対策を行わなければなりません。
その一つの手法として、株式を家族信託する手法を検討されてはいかがでしょうか。