2020.06.17
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家族信託の事前準備
こんばんは。加古です。
よく「家族信託と遺言はどちらが良いか?」などの質問を受けます。
答えとしたら、「どちらが良いとかではなく、遺言や後見手続きでは実現できない資産管理や資産承継を補うものが家族信託」です。
家族信託では、全ての資産を信託する必要はありません。大切な財産のうち、管理する必要性のある財産を家族信託すればいいのです。
それが、不動産の場合ならば、本人が認知症になってしまうと家は売れなくなってしまいます。または建替えしたくても、建替えが出来なくなります。
逆に考えれば、近い時期に売却や建替えを考えていらっしゃる方には、家族信託の利用をお薦めします。
また、管理する必要性のある財産が金銭の場合であれば、本人のための老人ホームの入居費用等を支払うことを考えてらっしゃる方には、家族信託の利用をお薦めします。
財産の中で処分することや引出す必要のない金銭は、必ずしも家族信託の信託財産とする必要はありません。
○家族信託は誰に財産を託すのか?
家族信託で最重要ポイントは、財産を託す人(受託者)がいるかどうかです。
後見制度では、相応しい後見人を裁判所が選びますが、家族信託は家族間の契約によるため、受託者に相応しい人がいて、その受託者が家族信託契約に基づき適切に管理して行くことが重要です。
受託者には、家族信託契約で定められる諸々の権限がありますが、同時にその財産管理や処分に義務・責任を追います。したがって、本人と信頼関係が強固な人が受託者になるべき人ではないでしょうか。
○家族信託の目的は?
家族信託においては、「何のために信託するのか?」という「家族信託の目的」も最重要ポイントになります。信託法上も「信託の目的」が家族信託契約をする前提としています。
なお、家族信託の目的を失ってしまった場合、その家族信託は終了します。
家族信託の目的は、本人(受益者)のためでなければなりません。家族信託契約を締結すると、財産の名義は形式的に「託された人」の名義になりますが、あくまでも家族信託による恩恵は、「託した人=受益者」のためのものです。
したがって、「何のために信託するのか?」は、家族信託では最も重要なものとなります。
○家族信託の終了後の財産の行方
家族信託では、本人が死亡した後の信託財産取得者を決めることが出来ます。
この点は、遺言と同様の効果があります(「遺言代用信託」と言います)。
また、財産から恩恵を受ける権利(受益権)については、何代先まで引き継ぐ者を指定することも出来ます。(「受益者連続信託」と言います)。
この様に、家族信託契約では従来の制度よりも柔軟に財産の承継先を指定することが出来ます。ただし、柔軟な財産承継が出来るが故に相続時に揉めないよう全体的なバランスを考慮することも大切です。
こうした場合には、遺言書との併用をお勧めします。
○最後に
家族信託を検討される方は、資産全体、将来相続人になる家族構成の把握、家族間の事情の再確認を行って頂き、「何のために」「何
を」「誰に」託すのかしっかりと考えて頂くことが大切になります。