2020.05.26
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家族信託の注意点
こんばんは。加古です。
家族信託については、様々なメディアで「良い部分」をクローズアップされていることが多いですが、今日は、家族信託の注意点とその対策について書いていきたいと思います。
1.信託財産の名義が受託者になります。
家族信託契約で信託された財産は、「受託者名義」になります。
父親が長男を受託者として不動産を信託財産とした場合は、「信託」を原因とした所有権移転登記を行いますので、不動産は長男名義になります。なお、所有権移転登記と併せて、家族信託契約書を抜粋した目録も登記されることになり、信託財産であることが一目瞭然となります。
家族信託をすると、財産の名義は委託者から受託者へ移ることになるため、名義が移ることに抵抗を持つ方がいらっしゃいますが、あくまでも形式的なもので、受託者名義になったからといって、受託者が自由に出来るわけではありません。受託者は家族信託契約の内容に従って財産の管理・処分をする必要があります。
したがって、委託者となられる方は、信託財産の名義が受託者に移りますが、完全に手放す訳ではありませんので、ご安心下さい。
2.信託口口座が作れない可能性があります。
金銭を信託財産とした場合には、受託者が金銭を管理して行くわけですが、信託された金銭と受託者固有の金銭がごちゃごちゃにならないように、分けて管理する必要があります(これを、分別管理と言います)。
分別管理のために、信託口口座を開設することをお薦めしますが、金融機関によってはこの信託口口座の開設を断れるケースがあります。
信託口口座を用意出来れば良いですが、開設出来ない場合には、信託専用の受託者名義の口座を開設して管理して行きます。
一番大事なことは、「分別管理」をすることなので、信託口口座でなければいけないとゆうことはありません。
3.家族信託で実現出来ないことがあります。
家族信託は、財産管理や財産承継について有用な手法ですが、あくまでも色々ある手法のうちの一つです。家族信託でも出来ないことはあります。
それは、「身上監護」です。「身上監護」とは、成年後見人が、成年被後見人の心身の状態や生活の状況に配慮して、被後見人の生活や健康、療養等に関する法律行為を行うことです。
家族信託は委託者の財産の管理・処分を行う制度であり、身上監護は出来ません。委託者に身上監護が必要となった場合は、別に成年後見制度を利用する必要があります。
4.受託者には色々な義務があります。
家族信託をした後、受託者は信託財産を分別管理しなければいけません。また、委託者の物を預かっているため自分の財産を扱う以上の注意を払う義務(「善管注意義務」といいます)があります。
そして、信託財産につき、収入がある場合や費用を支払った場合など、信託業務について記録に残しておく必要があります。
5.家族信託契約が数十年と続くことがあります。
家族信託は、委託者と受託者との契約であり、契約内容(=委託者の想い)によっては、契約が何十年も続く事があり、この契約期間の間、関係者は家族信託契約に従う必要があります。
途中で止めたくなることもあるかもしれません。「こうなったら止める」「こうなった場合はこうする」など色々な事情を想定しながら、家族信託契約を進めて行く必要があります。
6.家族信託そのものに節税効果はありません。
家族信託を利用して相続税対策を行うことは可能ですが、家族信託をしただけでは節税にはなりません。
○最後に
これまで家族信託の注意点を述べてきましたが、家族信託には今までの法律では出来なかったことが出来る様になるなど、優れたメリットが沢山あります。
司法書士法人アストラでは、しっかりとヒアリングを行い、具体的なメリット・注意点をしっかりご説明し、サポート致します。
遠慮なくご相談下さい。