2020.04.28
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成年後見、任意後見、家族信託の使い分け
こんばんは。加古です。
今日も家族信託に関して、「成年後見、任意後見、家族信託の使い分け」について書いて行きます。
〇財産管理に関する3つの手法
財産管理については、まだ本人が元気なうちは自分自身で管理をし、亡くなると相続人が財産を承継します。
近年は日本人の平均寿命は延びているのですが、その分、認知症等を発症する人が増えています。
高齢で思うように動けず、また、認知症等を発症してしまっても、寿命は延びているのでその間は財産を望むように管理したり処分したりすることが出来ません。
元気なとき ➡自分で管理
高齢・認知症➡どうすればよいのか?
死亡 ➡相続人が承継
対策としては次の3つがあります。
①法定後見
②任意後見
③家族信託
この違いは何でしょうか?
〇法定後見
「法定後見」は、判断能力が衰えた人のために、裁判所から選ばれた人が、財産管理・身上監護を行うことにより、本人の生活全般をサポートするための制度です。つまり、しっかりされている方は利用出来ない制度です。
判断能力が衰えてしまい、自分自身でお金の管理をはじめとする財産管理が出来なくなれば法定後見を使うしかありません。
法定後見制度を利用し、後見人が付けば、お金の管理や各種支払いなどの財産管理は、後見人が行います。また、施設の入所や入院手続き、確約書での手続きなどの身上監護も後見人が行います。
全国の認知症患者は525万人前後(※平成27年推計値)と推計されていますが、法定後見制度の利用者数は、平成30年末で21万5000人です。普及率としてはたったの4%です。
成年後見制度の普及率が低い理由としては次の3つであると言われています。
①後見人に第三者が選任される可能性がある
➡高齢者のご家族は、法定後見人を希望することはできますが、あくまで後見人を選ぶのは家庭裁判所です。家庭裁判所の判断によりご家族よりも第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士など)が選ばれる可能性があります。
第三者が後見人に就くと後見人が本人の通帳や財産書類を管理することになるので、後見人が預かります。
制度上のこととはいえ、他人に管理されることになるのはすんなりと受け入れられない身内の方が多く見受けられます。
②ランニングコストが高い
➡後見人に第三者である専門家が就くということは、その専門家は業務として行うので報酬が発生します。本人の財産状況等にもよりますが、年間24万円~の報酬を本人の財産から支払うことになります。この報酬は、法定後見が終了するまで、すなわち、本人がお亡くなりになるまで続きます。
③財産の処分等に制限がある
➡法定後見は「判断能力の衰えた本人のを保護する制度」です。別の言い方をすれば、本人の財産等の管理を援助することを目的としています。これまで出来てたことが出来なくなってしまいます。
例えば、余剰資金で投資をしたり、運用したりすることは出来なくなります。相続税対策も難しいでしょう。
また、不動産の売却をするには家庭裁判所の許可が必要になるケースもあります。
〇任意後見
「任意後見」は、将来、自分の判断能力が低下した場合に備えてあらかじめ後見人を自分で決めておくことができる制度です。その他にも、後見人に託したいことを自分で定めることが出来ます。
後見人にお金だけでなく、不動産の管理を任せるか否か、不動産の売却を任せるか否か、そして、後見人の報酬をどうするか?まで自分で決めることが出来ます。法定後見制度よりも、事前に色々決めれることから利便性は高そうです。
しかし、この「任意後見制度」も利用に躊躇してしまうことがあるようです。
①監督人が選任される
任意後見は、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申立てることにより任意後見の効力が生じます。この任意後見の効力発生させると、「任意後見監督人」が選任されます。「任意後見監督人」も弁護士・司法書士等の第三者が選任されます。ただ、法定後見と異なり、任意後見監督人は本人が指定しておくことが出来るのですが、第三者が財産管理に介入することを避けたいご家族は一定数います。
②財産の使途に制限あり
任意後見は、本人が財産の管理方法をあらかじめ決めておくことが出来る制度ですが、あくまで後見の一つで、基本的には本人のために財産を使う制度です。したがって、本人の財産を家族のために使うことは難しいと言えます。
例えば、子供に結婚資金として500万円あげれるようにしたいと任意後見で定めても、任意後見監督人と協議せざるを得ません。
〇家族信託
本人が信頼する人に財産管理をお願いしたい。そしてある程度、柔軟に管理等できるようにしたい場合は、家族信託です。
家族信託であれば、法定後見や任意後見と異なり、裁判所が関与することもありませんし、財産の使途も自分の望むようにできます。
このように、家族信託は、認知症などの場合の備えとして最も柔軟な対応ができる制度と言えます。
①身上監護は対象外
➡家族信託は財産管理の手法ですから、役所での手続きや施設の入所契約などの身上監護は家族信託の対象外です。
②包括的財産管理
➡すべての財産をまとめて家族信託することは出来ないとされています。また、信託後に取得した財産は信託の対象外なので、対処が必要となります。
〇任意後見と家族信託の使い分け
任意後見と家族信託は、どちらか一方のみ利用すると言うような選択的利用も可能ですし、併用して使うことも可能です。
併用するやり方としては、身上監護の面では任意後見を利用し、柔軟な財産管理には家族信託、包括的な財産管理として任意後見を利用する方法です。
任意後見と家族信託の併用的利用か選択的利用かは、お客様からのお話をお聞きした上で、ご要望に適う方法を提案致します。