2020.01.23
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家族信託契約書と公正証書
こんばんは。加古です。
家族信託契約を締結するためには、事前に色々と決めることがあり、その内容が確定すれば、家族信託契約書を作成します。
そして、委託者と受託者が契約書に署名と押印をして家族信託契約書の完成なのですが、この家族信託契約書は、公正証書で作成するのが良いか? 普通の契約書にするのが良いか?と質問がありました。
今日は、公正証書で作成することの必要性について書いていきます。
結論から言うと、家族信託契約書は公正証書で作成するのが望ましいです。
1.家族信託契約書を公正証書で作成するのが良い理由
① 信託口座開設のため
家族信託の受託者は、託された財産を自分の財産とは分けて管理しなければなりません。
信託された財産が金銭である場合は、銀行で信託専用口座を開設して、その金銭を管理することになります。
しかしながら、全ての銀行が信託専用口座を開設してくれるわけではありません。
なぜなら、そもそも家族信託を良く知らなかったり、家族信託契約が適法に成立しているか否か分からず、リスクを回避するためといった理由から、対応できる銀行が限られていると考えられます。
公正証書は、裁判官や検察官、そして弁護士の経験をされたことがある公証人が作成します。
法律のプロである公証人が本人確認や意思確認を行い作成するものですので、公正証書は普通の契約書よりも信用力がはるかに高いです。
そのため、家族信託契約書を公正証書で作成することによって、適法に作成された契約書であることが担保されることから、信託口座を開設してくれる確率が高まります。
② 家族信託契約書の原本が公証役場に保管されるため
普通の家族信託契約書では、契約書を紛失してしまった場合、家族信託を継続できなくなる恐れがあります。
契約書が無ければ、第三者に家族信託をしていることを主張できないからです。
この場合、新しく契約書を作り直すことが出来る可能性もありますが、委託者が認知症などで意思能力が低下してしまっていれば、再契約は不可能です。
紛失リスクは、家族信託契約書を公正証書で作成すれば回避できます。なぜなら、この契約書の原本は公証役場で保管されるからです。
そのため、契約書を紛失してしまっても、公証役場に契約書の謄本を請求し入手することが可能です。
2.公正証書のデメリット
家族信託契約書を公正証書で作成するデメリットもあります。
①公正証書を作成するには手数料が発生します。この手数料は、3万円前後で公証役場に支払います。
②公正証書の作成のために、委託者と受託者が集まり、公証人の面前で作成する必要があります。
③公証役場は平日の日中しか開いていません。
3.まとめ
家族信託契約書の作成は、委託者・受託者や家族と何度も話し合いをして決めるものです。せっかくの家族信託ですので、リスクを回避し、法的安定のためも家族信託契約書は公正証書で作成することを強くお勧めいたします。