2020.09.08
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家族信託における借入れと債務控除
こんばんは。加古です。
家族信託の相談の中で、「家族信託を利用して住居の建て替えや大規模修繕を行うために、銀行ローンを使いたい」との相談があります。
この際に検討しなければならないことは、銀行ローンの性質と親がお亡くなりになった時の債務控除が可能か否かという点になります。
1.信託内借入と信託外借入
家族信託を利用した銀行ローンの性質としては、家族信託契約で定めた受託者の権限において、受託者が銀行ローンを受ける「信託内借入」と家族信託契約とは関係の無い銀行ローン「信託外借入」の二つがあります。
・「信託内借入」:ローンで借り入れた金銭は、受託者の管理する信託財産となります。
➡家族信託契約に基づいた借入れのため、借りたお金は信託財産となり、受託者が信託目的に沿って利用できます。
・「信託外借入」:ローンで借り入れた金銭は、信託財産にはなりません。
➡家族信託契約とは全く関係の無い借入れであり、親自身のお金となります。
このように、「信託内借入」と「信託外借入」では、家族信託契約に従い受託者がローンを受けるか、委託者である親がローンを受けるかの違いがあるため、親の死亡に際してローンの取り扱いが変わります。
○「信託内借入」の性質
「信託内借入」では、受託者が受託者名義でローンを受け、建て替えや大規模修繕、返済などの一連の手続きを行うことが出来ます。
この際、契約書などの署名欄には「委託者●●信託受託者○○」との振合いで信託事務の一環であることを明確にします。
なお、そのローンを使って家を建て替えた場合には、その新居も信託財産となります。
ローンの返済も受託者が行いますが、返済は信託財産内のお金から行います。受託者の個人財産から返済をするわけではありません。
そして、家族信託をした財産は全て受益権に代わりますが、受益権にはこのローンも含まれるので、受益者である親が死亡した場合には、信託財産である新居などのプラス財産はもちろんのこと、ローンなどのマイナス財産も受益権として移動します。
したがって、親の死亡後には受益権を引き継いだ者が、新居もローンも引き継ぐことになります。
○「信託外借入」の性質
「信託外借入」では、ローンは信託財産とはならず、委託者である親自身が負担するものとなります。
全て、親自身が行うことに注意して下さい。信託内借入のように受託者がローンを受け、各種手続きを行い返済していくわけではありません。
したがって、親の死亡後にローンは、家族信託契約に関係なく委託者である親の法定相続人に相続されます。
2.ローンと債務控除
家族信託契約を利用したローンが親の死亡時に残っていた場合、相続財産からローン残高を控除できるか否かについて「信託内借入」と「信託外借入」とでは取り扱いが異なります。
○信託外借入と債務控除
信託外借入では、委託者である親自信がローンを組んでいるため、家族信託契約内の債務ではありません。
通常の相続と同じように考えれるため、債務控除出来ると思われます。
○信託内借入と債務控除
信託内借入の場合における債務控除では、その可否に関して明確に決まっていないようです。
色々と調べましたが、信託内借入のうち「受益者連続型信託の場合は、債務控除か可能であるが、一代限りの家族信託の場合は、債務控除できないと解釈される」等、断定は出来ないのが現状のようです。
したがって、このローンと債務控除に関しては、税理士や税務署と確認しながら進めて下さい。