2020.03.10
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認知症対策における家族信託と成年後見制度の違い
こんばんは。加古です。
今回は、家族信託と成年後見制度の違いを確認しながら、認知症対策ではなぜ家族信託なのかを説明します。
まず、改めてですが「家族信託」とは、何なのか簡単におさらいです。
1.家族信託とは
「家族信託」とは、一言でいうと『財産管理の一手法』です。
資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。いわば、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」と言えます。
2.成年後見制度とは
認知症、知的障害、精神障がいなどの理由で判断能力の不十分な方々について、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあう恐れもあります。
このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度は、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。
また、法定後見制度は,「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。
法定後見制度においては、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
成年後見人等は、本人の財産額にもよりますが、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースも多くあります。
3.認知症対策と家族信託
<自宅の売却を例に>
①相談内容
父は80歳と高齢で、物忘れも見受けられ、認知症になってしまうことが心配です。
また、母はすでに他界しているため、父の面倒は私が看るつもりですが、ゆくゆくは自宅を売却して施設へ入所させていたと考えています。
父が認知症になってしまった場合でも、自宅を売却することが出来るのでしょうか?
②回答
程度にもよりますが、御父様が認知症になってしまうと、売却に時間と費用がかかったり、最悪、売却出来なくなる恐れがあります。
〇認知症の程度が重い場合は、成年後見制度を利用して売却していくことになります。
【成年後見の場合】
・成年後見制度を利用した場合、家庭裁判所が選任した成年後見人が御父様の財産を管理することになります。
・必要に迫られ、自宅を売却するにしても家庭裁判所の許可がなければ売ることができません。
・成年後見人への報酬が毎月発生し、御父様がお亡くなりになりまで支払いが続きます。相場として月1万5000円~3万円ほどですが、トータルでは非常に高額になってしますケースもあります。
〇物事の判断能力がある状態ですと、家族信託を利用することをおすすめします。
【家族信託の場合】
・信託契約で定めた家族(例えば、長女)が、御父様の財産を管理することができます。
・自宅の売却に際しては、家庭裁判所の許可を得る必要は無く、長女様の判断と手続きで売却が出来ます。
・売却によって得たお金は、御父様のために使うことが出来ます。
・家族信託は家族間で行うため、基本的に報酬は発生しません。
4.まとめ
家族信託は、成年後見制度では出来ないこと、足りない部分を補うことができる制度です。
反対に、家族信託では出来ないこと、足りない部分を補えるのが成年後見制度です。
家族信託と成年後見制度をどのように利用していくのが良いかは、是非、ご相談下さい。
そして、家族信託は契約ですので、財産を託す親御様が認知症になる前に利用すべき制度であることに注意して下さい。